運営者からの挨拶
多くの場合、セックスのイニシアチブは腰を動かす男性の側にあります。自分でペニスを挿入する深さやスピードを調整しやすいため、男性がオーガズムに達することは比較的、容易です。一方の女性は基本的に受身の立場。オーガズムが得られるかどうかは、男性次第ということになります。こうした事情を考えると、「夫、彼氏のセックスが身勝手で、実は感じたことがない」という女性が少なからずいることは、仕方がないことのように思えます。けれど、そのなかで「あなたのセックスで感じたことがない」「自分も一緒に気持ちよくなりたい」という気持ちをパートナーに言葉や態度で伝えたことがある女性は、どのくらいいるでしょうか?
身勝手な愛撫を繰り返す男性に非があるのは当然のことですが、ロを閉ざし黙ったまま、ときには演技までして、やりすごしてきた女性にも責任の一端はあります。そもそもセックスにおいて、男女のどちらか一方だけが悪いというケースは、あまり考えられません。その証拠に、セックスレスのカウンセリングは通常、カップルで受診します。片方の気持ちや言い分を聞くだけでは、ふたりがセックスレスになった原因にいつまでもたどり着けないからです。
本当の理由がわからないままでは、治療どころか、解決への糸口をつかむことすらできません。双方の思いを知ることが、スタート地点となるのです。現状のセックスでは満足していないこと、自分も一緒に快感を得たいと思っていることを伝える ー 本当に気持ちのいいインタラクティブ・セックスを目指すうえで、この作業は欠かせません。本心を伝えないままでは、男性の愛撫が改善されるチャンスは、永遠に訪れないでしょう。
このようにアドバイスをすると、「それができれば苦労はない」と反論する女性が必ず出てきます。「いまさらそんなことを伝えたら、彼が傷つきそう」、それどころか「『いままで俺を騙してきたのか!』って怒り出すかも」と心配する声も聞こえてきます。
しかし、私が診療の場で、主に女性からセックスに関するさまざまな相談を受けてきて感じたことは、パートナーに自分が悩んでいることを伝えずに解決できる例は、ゼロに近いということです。思いきって相手とコミュニケーションを取った人の前にだけ、道は拓けます。ふたりで一緒に悩みと向きあった結果、パートナーとの関係を改善し、幸せなセックスライフを手に入れたという人は数多くいます。
これまで女性の胸の内に隠されてきた真実を目の前に突きつけられると、男性はショックを受けるでしよう。でも、ここが乗り越えるべき最大のポイントです。お互いを一時的に傷つけてでも本音でぶつかりあい、ふたりのセックスを改善させたいのか、あるいは、今後もウソをつきながらセックスという苦痛な時間を耐えていきたいのかを、あらためて考えてください。
話すきっかけが見つからないのであれば、映画や小説の力を借りてみるという方法があります。ただエロティックなシーンがあるものよりも、登場人物たちがセックスについての悩みを話しあうシーンが含まれている作品がいいでしょう。
例えば映画『ノルウェイの森』では、同名原作小説よりも、セクシャルな側面が強調されて描かれているように思います。初恋の男性とのセックスがうまくいかなくて悩んでいたヒロインや、彼女の痛みを受け止め、一緒に乗り越えようとする主人公の姿を見て、パートナーとふたりで意見を交換すると自然に対話が生まれます。
小説『ダブルファンタジー』では、セックス中に夫が放った心ないひとことによって、夫婦の関係が崩壊していくところから物語が始まります。そのすれ違いに、何を見るのか。男性と女性とで受け取り方が違うかもしれませんが、それを話しあううちに、お互いの心情も見えてくるでしよう。
性の悦びも悩みも女性同士でオープンに語りあう『セックス・アンド・ザ・シティ』のようなコメディタッチの作品であれば、より気軽に会話のきっかけを探しやすいのではないでしょうか。
話しあうことができれば、それが無駄に終わることは決してありません。もし、男性が自分だけ身勝手に傷つくばかりで、これまで自分自身がパートナーに与えてきた傷を顧みることもなく、まったく変わろうともしないようなら、これを機にふたりの関係性そのものを見直すべきでしょう。セックスというのは、ふだんの関係性の延長にあるもの。そんなパートナーとは、日常生活やふだんの会話においても埋められない溝があるはずです。そして、それは時間が経つほど広がっていくものだからこそ、早めに対処しなければならない問題なのです。
お互いの人間性や、ふたりの関係性までもがあぶり出されるのですから、セックスについて本音で話しあうことは、勇気を必要とする行為です。それに加えて愛情がなければ、いつまでも踏み切れないでしよう。ですがこれは、愛情さえあれば乗り越えられるということでもあるのです。女性のみなさんは勇気を出して、ぶつかってみてください。
さて、当サイトの名称にも使われている「楽市楽座」とは、安土桃山時代に織田信長をはじめとする各地の戦国大名が支配地の市場で行った経済政策です。楽市令または楽市楽座令とも呼称されます。「楽」とは規制が緩和されて自由な状態となった意味。自由が許されるからこそ経済発展が成し遂げられたのと同じように、既成概念から解き放たれた自由な発想でこそ、ふたりを繋ぐ最上のセックスが可能になるというのが、当サイトの信念です。